バラクータへの挑戦、伝統と進化の楽しみ方

バラクータへの挑戦、伝統と進化の楽しみ方_image

撮影/木村武司(木村写真事務)
取材・文/ミューゼオスクエア編集部

日本では総称してスイングトップと呼ばれるハリントンジャケット。実はスイングトップって和製英語だとご存知でしたか? 今日はそのハリントンジャケットの代名詞ともいえるBaracuta(バラクータ)の「G9」「G4」をミューゼオスクエア編集長がご紹介します。学生時代からバラクータには良い思い出がない(!)という編集長。それでもバラクータに挑戦してしまうその魅力を探ります。

失敗しても憧れが尽きないバラクータ

バラクータのハリントンジャケットは若い頃から何度も挑戦しては失敗してきた。大学生時代や、社会人になってまもなくの頃にチャレンジしたが、どうもうまく着ることができず、買ったはいいものの……という感じで、お蔵入りになっていった。というのも着こなしがとても難しく、自分が着てもどこか垢抜けない感じになってしまうからだ。それでもめげずに挑戦してしまうのは、バラクータにどこか憧れがあるから。あのドッグイヤーカラーのジャケットの存在感が好きなのだ。
過去の失敗に懲りず、久しぶりにバラクータのG9を購入したのだが、久しぶりに着てみると改めて、バラクータはプロダクトとしてよくできていると感じる。不思議にも以前よりちゃんと着られるようになった気がして、今回はお蔵入りせず済んでいる。もちろん今でも一歩間違うと「うーん……」という感じになってしまうのだが、その難しさが挑戦しがいがあるし、うまく着れた時は純粋に嬉しい。

細身に刷新された「G9」

2020年に久しぶりに購入したバラクータのG9。「original」と冠しているだけにディテールは踏襲しているが細身かつ素材も刷新されている。

MuuseoSquareイメージ

バラクータ G9 ハリントンジャケット

常にイギリスで生産されてきたBaracutaのG9 ハリントン ジャケット。
通気性の高いCoolmax®生地で作られたフレイザータータン柄の裏地、 前身頃にフラップとポケット付き、後ろ身頃にはアンブレラヨーク、 袖口、ウエストバンドとえり内側はリブ仕上げ、そしてボタンで閉めるスタンドカラーの襟が特徴的なデザイン。
バラクータ「G9」公式サイト

G9は全身紺でスタイリングするのが好きだ。少しでもバランスを崩すと一瞬で似合わなくなってしまうのが中々難しい。

オーダーシャツ/LOUD GARDEN(ラウドガーデン) ニット ベスト/VINCENT ET MIREILLE(ヴァンソン エ ミレイユ) 360°スーパーストレッチ パンツ/PT TRINO(PTトリノ) センターエラスティックシューズ/TANINO CRISCI(タニノクリスチー)

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ドライビングコートの「G4」

G9の使用頻度が高かったので翌年にG4も購入。G9と違いリブがなく、ドライビングコートというだけあって着丈が長め。G9に比べて着こなしは難しいが、tanというカラーが好きな色目で気に入っている。

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バラクータ G4 クラシックジャケット

G4 クラシックをさらに完璧なスタイルへとアップデートしたモデル。クラシックなG9に特有のラグランスリーブを取り入れ、より快適に着られるよう、ゆったりめのフィット感に仕立たてられている。スタンドカラーの襟や背中側のアンブレラヨーク、フィット感を調節できるサイドストラップなど、G4のアイコニックな特徴をそのまま受け継いでいる。もちろん、内側にはバラクータの伝統が光るフレイザータータン柄の裏地を使用。
バラクータ「G4」公式サイト

G4はツルっとした感じが難しいが、白のパンツとスプリングニット、そこに革靴を合わせている。カジュアルな服を選ぶときは、足元はスニーカーより革靴派だ。

コットンニットベスト/FilMelange(フィルメランジェ) ストレッチホワイトパンツ/PT TRINO(PTトリノ) ローファー/johnlobb(ジョンロブ)

コットンニットベスト/FilMelange(フィルメランジェ) ストレッチホワイトパンツ/PT TRINO(PTトリノ) ローファー/johnlobb(ジョンロブ

伝統と進化の楽しみ方

いくども失敗してきたバラクータが、ここ最近になって着られる様になってきたのは自分の年齢がバラクータに合ってきたというのもあるが、ブランド側が着やすいものにしているという事も大きいと思う。最近のバラクータはイタリアのWPラヴォリ・イン・コルソ(WP Lavori in Corso)社の傘下になったこともありブラッシュアップされている。以前に比べて丈を絶妙な長さで短くしたり、身幅や腕まわりなど全体的にスリムにしたりと、今らしいデザインになっているのだ。その他にも素材にクールマックスを入れるなど機能面にも追求の姿勢を感じた。バラクータだけではなくフィルソンという欧米のメーカーもシルエットを細身にしていて、今の時代でも着やすいようにしているのだと思う。どのブランドも伝統を守りつつ進化をしているのだと感じた。

MuuseoSquareイメージ

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腕まわりや身幅が細身になっていて、現代でも違和感のない作りだ。

歴史あるアイテムのモダナイズは、どこを継いでどこを変えるかなかなか難しい問題だと思う。だが、自分としてはその変化を知った上でどれを選択するか決めるという楽しみもある。「アイテム同士の細かい差異」は自分の服への興味の一つでもあるし、素材好きとしては旧素材だけでつくられたものも美しいと思うけれど、新素材も嫌いではない。こういう進化は歓迎だ。



ーおわりー

メンズファッションを深く知る編集部厳選書籍

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そのビジョンは今なお色あせず、未来を予見する力を秘めています。
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メンズウェア100年史

カジュアルの元祖は、英国のエドワード7世だった…!? ロイヤルファッションから、ナチス体制への反発心を表現していたザズー・スタイル、究極の作業着をデザインしたロドチェンコ、革ジャンを流行らせたマーロン・ブランドの映画、1960年代の「ピーコック革命」、ジョン・レノンの髪型、パンクとクラブ・シーン、時代を先導した雑誌たち、そしてトム・ブラウンのタイトなジャケットまで。
この100年間にメンズウエアの世界で巻き起こった革命を、ファッション史家、キャリー・ブラックマンの解説付きでわかりやすく紹介した贅沢な写真集。
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この貴重な本の中では、ピエール・カルダンやジョルジオ・アルマーニ、ラルフ・ローレンなどの有名デザイナーたちが与えてきた影響力と1960年代のストリート・ファッションが対比されていて、パンクやクラブ・シーンがメンズウエア市場を発展させた経緯についても言及している。
『メンズウェア100年史』は、ファッションを学ぶ初心者はもちろん、ファッション史家や、メンズファッションをこよなく愛する人々にとって必読の書である。

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公開日:2021年7月20日

更新日:2021年7月21日

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